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ししおどしと水琴窟 〜余韻の音風景を楽しむ〜

 チョロチョロとささやかな水の音が静けさを際立てています。時折、ししおどしのコーンという音が、静寂な空間に点を打つかのように心地よく響きます。その後もしばらくは庭全体に音の余韻が残り、その余韻が消えるころ再びコーンと響きます。この音を聴くと、私は座禅中に警策で打たれたような引き締まった気持ちになります。


 ししおどしは、先端を斜めにそいだ竹筒に水を引き入れ、たまる水の重みで竹筒が頭を下げて水を吐き出すと、元に戻る力で竹筒の底が下に置かれた石をたたく仕組みになっています。

 ししおどしの「しし」は鹿や猪を意味し、もともとは田畑を荒らす動物たちを音で驚かして追い払うための仕掛けとして考案されたものなのです。かかしと同じ役割をしていたのですね。ししおどしが農村で普及するにつれて庭にも取り入れられるようになったと言われています。京都の詩仙堂にあるものが有名ですね。

 先人たちはこのように音を風景の一つとしてとらえ、遊び心いっぱいに庭に取り入れてきました。

 「水琴窟」もその一つです。水琴窟は、蹲踞の排水口の下にかめを伏せて埋め、かめに落ちた水滴の音を反響させて楽しむものです。琴を奏でるような風雅な音色を奏でることが名の由来となっています。

 水琴窟は江戸時代の中ごろに考案されたといわれ、明治時代までは盛んにつくられていたようですが、近年まではほとんど忘れ去られていた存在だったようです。十数年前にテレビで紹介されたところ、庭園愛好家の間にちょっとしたブームを呼び、再び庭につくられるようになりました。

 その音色はかめの大きさなどによって異なりますが、ピヨン、ピヨン、いやポヨン、ポヨンでしょうか、どうも言葉ではうまく表現できませんね。それほど微妙で透明感のある音色なのです。いったいどんな音がするのだろうと興味を憶えた方は、水琴窟のCDも発売されておりますので聞いてみるといいでしょう。また最近では水琴窟の音が聞けるホームページもあるようです。

 ししおどしや水琴窟ばかりが庭の音ではありません。しばし目を閉じて庭を観賞してみましょう。木々の葉ずれの音、鳥のさえずり、せせらぎ、虫の声……。これらの音が耳に届くとき、周囲の喧騒から離れた世界に引き込まれます。庭の音を楽しむということは、庭の静けさを楽しむことなのです。


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